濱美智広・鈴玉ご夫妻

「夢のあとさき」

濱 美智広・鈴玉ご夫妻 中華料理 華豊 代表

yoroshiku_02熊本に中華料理店を営む家族があった。その店の長男と懇意にしていた男子短大生が料理に関心を持ち、いつしか同居するようになる。家には同じ短大に通う同学年の娘がいた。
「世間体があるから入籍しなさい」娘の母親に諭され、二人は結婚。娘はすでに店を手伝うことになっており、男も市役所に採用が決まっていた。

 

 

 

 

「公務員と結婚できたんですから、生活は安定しますよね」奥さんの鈴玉さんはとても嬉しかったと言う。ところがご主人の美智広さんは、そのまま店を手伝うと言い出した。「自分の人生は自分が主役でいたいと思いましてね」当時の心境を振り返る。
しかし、五年後、奥さんは再びご主人の思いがけない言葉を耳にする。身寄りも何もない長崎の南高来・加津佐町で独立すると言うのだ。「家族の中の歯車の一つだと気付きまして。だから皿・鉢を義兄から貰い、僅かな積立をはたいてジャガ芋畑の真ん中にポツンと店を開いたんです」
開店当初は農家の方々を中心にお客はどうにか来てくれていた。
「それが四月下旬にパッタリ途絶えましてね。後で解ったんですが、農家は収穫期で忙しかったんです」と、奥さんは笑う。
客足が戻り、辺りの生活に慣れ始めた頃、また転機が訪れた。
「深夜に利用してくださる方々が増え、次第に世間話や将棋をする溜り場になって、正直なところ大変でした。主役はお客様だったんですね」御主人は苦笑い。
奥さんは体調を壊したと言う。三人の子供に構う暇もない、言い争いの日々。それを見兼ねた御主人の両親が、役所を辞めて手伝ってくれることになった。「お陰で地域の人たちが“仲間”として認めて下さったんです」奥さんは感謝を忘れない。
地元の人々や肉親に支えられた二人は、数年前に店舗を200人近く収容できるビルに建て替えた。今では、長女と婿そして長男が店を手伝っている。
「子供たちが“親の働く姿がなによりの財産だから”と言ってくれたときは・・・なぁ」
御主人からそう投げ掛けられた奥さんは「この主人と一緒に、この仕事ができたからよかったんです。どちらが欠けてもダメだったでしょうね」瞼から何かを振り払うように唇を結んだ。
二人は今年で結婚30周年、そして独立開業25周年の節目を迎えた。

 

 

2005年7月vol.9 「よろしく先輩2」