前田健二・光江ご夫妻

「白い恋人たち」

前田健二・光江ご夫妻 ステージ21

yoroshiku_04.fw1871年(明治4年)に「士農工商四民の斬髪勝手たるべき事」という太政官布告が出された。世に言う『断髪令』である。こうして、丁髷(ちょんまげ)を結う“元結い”から“散髪”の時代が到来する。ものの本によれば、一般的に滋賀県から東では「床屋」だが、以西では「散髪屋」と呼ぶらしい。ただ、九州では混用される地域もあるようで、ここ長崎では「床屋」が多いと聞く。

 

 

 

 

ところがこの店は“STAGE21”とだけある。さぞや若い経営者の方だろうと思っていたら、ご主人の健二さんは来年還暦を迎えるとのこと。
随分モダンな名前ですね。
「ええ、実はこれなんです」健二さんが鏡に向かってスイッチを入れると、なんとその向こうにテレビが映った。お客さんが散髪をしながら見ることができる仕掛け。その商品に由来する大阪の先輩の店名を引き継いだのだそうだ。

ところで、お二人はお見合い結婚だそうですが。
「はい。見合いをして6ヶ月と1週間で結婚しました。でも主人はAB型で繊細、私はO型でスッキリタイプ。性格が正反対ですから、喧嘩も多いですよ」と光江さん。
手先の器用な健二さんは裁縫もするという。
「だけど、夫婦は正反対の性格のほうがいいと思いますね」そう言って光江さんが店の表を指差した。理髪店のクルクル回る看板だった。赤は動脈、青は静脈、そして白が包帯だとか。
「例えて言えば、男性的な私が赤で、細かい主人が青じゃないかしら」
それじゃ、白は。
「さあ、正反対の二人の間の“溝”でしょうか…」光江さんは考え込む振りをし、物静かな健二さんが照れくさそうにほほ笑む。
「いつも一緒だから、接着剤か」
「そう、24時間一緒。たまに私が街に出掛けると、必ず携帯電話が鳴るんです。少しでも離れてると、お互いに不安なんですよ。一緒にいるのが当たり前になってますからね」と光江さん。
なるほど、それじゃ休日も御一緒ですね。
「盆休みと正月はあちこち旅行しますよ」
「主人が車好きで、今年も盆休みに石川県の『松井秀喜記念館』に行ったよ、…ね。」
二人は秘密を共有する子供みたいに見詰め合った。
なんだ、白は二人を結ぶ“愛情”って言いたかったんですね。

 

 

2005年9月vol.11 「よろしく先輩4」