御崎喜嗣・静香ご夫妻

「フライパンの詩(うた)」

御崎喜嗣・静香ご夫妻 ホテルニュー長崎レストランハイドレンジャ調理部長

yoroshiku_05.fw調理と料理はどう違うのだろうか。
強いて言えば、調理は包丁を用いることで、料理はその他に煮炊きなどの加熱をする部分までを含み、さらには完成品自体も表すようだ。“魚を調理した”と言えば、三枚おろしにするようなことで、決して“煮魚”にはなっていないから・・・。

 

 

 

 

こうして一応の解答を出したつもりでいると、喜嗣さんの名刺には「調理部課長」とある。一般的には「料理長」だから、ここでも調理と料理の区別がつかなくなってしまう。
「でも、調理・料理は理屈ではありません。じっと先輩の動きを“見る”ことなんです」

 

若い頃、美容師になるつもりだった喜嗣さんは、アルバイト先のホテルの厨房で皿洗いをするうちに、この道に入ったとか。
「ある時、キャベツを切らせてもらったら合格しました。次に料理を作ってみろと言われ、それまで見ていたまま作ると、これも一発で合格しました。いつも側で動きを見ていたのがよかったんですね」
静香さんとは、福岡のホテル時代に知り合われたそうですが、決め手は何だったでしょうか。
「ええ、そのころ私はフロント係で主人が厨房にいまして、いつも見掛けてましたから・・・」
やはり“見る”のが大切なんですね、男女も
そう言って喜嗣さんはひとしきり笑ってから、
「結婚を考えている時に母が亡くなり、体の不自由な父の面倒をみるため私は長崎に戻ることにしたんです。正直なところ、彼女とのことは諦めるつもりでした」と話す。そんな事情を承知で静香さんはついて来たのだとか。
字は違いますが“看る”って勉強なんですね。主人が先輩の仕事を“見る”のと同じかもしれません」と、静香さんは噛み締めるように語る。

 

喜嗣さんは、2000年にドイツで開催された4年に一度の『料理オリンピック』の日本代表6人の中に選ばれ、世界の32ヶ国から参加した人達を相手に銀と銅のメダルを獲得している。
「母親の料理が根底にあるんです。お袋の味です」
「主人はいつもそう言います。ですから私も3人の子供のために“お袋の味”を伝えたいですね」
今日も、喜嗣さんのフライパンがお客さんの舌を魅了し、静香さんのフライパンが“おふくろの味”を生み出していることだろう。

 

 

2005年10月vol.12 「よろしく先輩5」