山口徳之・あゆみご夫妻

「そよ風の中の二人」

山口 徳之・あゆみご夫妻 VOICE代表

yoroshiku_06.fw漢和辞典によれば、“若”の文字は元来『したがう』の意味だった。それが国語になって『わかい』と転化した物らしい。詳細な歴史は知る由も無いが、若い時は先人・長老・経験者の言葉に従うべきだとする思想かもしれない。ところが・・・。

 

 

 

 

 

「私は誰の言うこともまったく聞きませんでしたね。親であれ先生であれ」五島出身の徳之さんはそう振り返る。

 

それが高校二年のある日、身内の一言に強い衝撃を受けたのだそうだ。
「ぶらぶらしてないで床屋にでもなってみなさいって言われたんです。生まれて初めてのショック、まさに言霊ですね。」卒業と同時に上京、美容院で見習いとして働くことにした。
「21歳の時、ヘアー・カットのモデルになった18歳の女子高校生の髪を、自分の好みで仕上げたら泣き出してしまったんです。短過ぎるって」
すると横に座っているあゆみさんがほほ笑んだ。
なるほど、合縁奇縁ってやつですね。
「私が25歳、彼女が22歳の時に結婚しました。でもまだ私は独り立ちをしていなかったので、彼女の身内からは猛反対を受けました」
それでも言うことを聞かずに?
「ええ。今に見てろって・・・若さですね」
埼玉出身のあゆみさんを伴って、身寄りのない長崎で“VOICE”を開いた。お客さんの声を聞く意味合いなのだが、家庭内はそうは行かなかった。

 

「随分苦労を掛けました。二人とも郷里を離れてますから、二人の子育ても親の協力を得ずに頑張ってくれてますし。今、初めて言いますが、彼女の愛情は男女を越えた“博愛”ですよ。ギブだけでテイクがないんです」心なしか徳之さんの目が潤む。それを優しい笑顔で受け流して、あゆみさんは話す。
でも、若いっていいですよね。若いから出来ることって沢山ありますから。最近は結婚年齢が遅くなってますが、勿体ないなって思います。その間に幾つもの思い出を作れるのに
そう。喧嘩だってしますが、時間の風化に任せるんじゃなく、互いに聞く耳を持って話し合うことにしてます。だから、いい思い出に変わるんです
話しながら、徳之さんは風に揺れるあゆみさんの前髪を優しく撫で上げる。
先程から何かすがすがしい物を感じていたのは、窓からの風だけではなく、二人の間から醸し出されるハーモニーなのかもしれない。

 

 

2005年11月vol.13 「よろしく先輩6」