石橋義昭・政代ご夫妻

「笑う鯨」

石橋 義昭・政代ご夫妻 石橋貝産物 代表

yoroshiku_08.fwインドネシアのレンバダ島民は生存捕鯨を認められた人々だが、漁に出る船では話をしないという。鯨は人間の言葉を理解すると信じられているからだ。
それと同じ理由ではないのだろうが、ご主人の義昭さんはいたって無口。
そもそもお二人のなれそめは?

 

 

 

 

「・・・そんなことは、忘れたですね」
あとはシジミのように口をつぐんだまま。
「私は森山町の農家の出身なんですが、ある時この店で住み込みで働く事になりまして。主人の姉たちに気に入ってもらえて、それで・・・」
こちらも言葉を抑え、店の奥で包丁を使う義昭さんに目配せをしている。
しかし、ご主人はまんざらでもなさそう。いえ、ちょっと照れくさそうな笑顔だ。
鯨はもとより、貝類も昨今は漁が減っているようですが?
「そう、厳しいですね。ですけど農家の仕事に比べると、商売のほうが楽ですよ。動きが全然ちがいますから」と、政代さんは気丈に応える。その間も義昭さんは無言で包丁の手を休めない。それなのに、政代さんの言葉には微妙に口許を暖めている。
鯨は、人間には聞こえない低周波で数千キロ離れていても交信できると言うが、まさにそれかもしれない。二人には周囲の人には気付かれることのない特殊なコミュニケーション法があるのだろう。

 

 

yoroshiku_08_02.fwそんな妄想を巡らせていると、義昭さんが奥から鯨の切り身を店頭に持って出て来た。「これを写真に撮りませんかって」と勧めてくれたのは、政代さん。義昭さんは無言のまま、見栄え良く並べている。ふーん、以心伝心!「夫婦に言葉は要らんでしょ」と、義昭さん。まるでこちらの質問を予期していたように一言。そして満面の笑顔。その背後で政代さんも同じ顔。この二人、絶対に鯨にちがいありませんよ。

 

 

 

 

 

 

2006年1月vol.15 「よろしく先輩8」