田中英敏・香代子ご夫妻

「瓢箪(ひょうたん)から恋」

田中英敏・香代子ご夫妻 喫茶室 本格珈琲専門店「萌華」

tana_011 芥川龍之介の短編「竜」を読んだことはありますか。鼻が大きいことで皆から笑い者にされている恵印という僧が、三月三日に猿沢池から竜が出て来ると嘘を吐く。皆が騙される様子を見て笑い返してやろうとの魂胆です。ところが本当に竜が出て来る話。まさに“嘘から出たまこと”ですね。

 

 

 

 

 

 

二人の馴れ初めを聞かせて下さい。
「共通の知人からの紹介で会ったんです」と英敏さん。「でも、まあお見合いですね」と香代子さん。
「当日は、そのうちに食事でも・・・、と言って別れたんですが、そのままになってましてね」英敏さんは笑います。
「私も忘れてましたけど、二か月くらい経ってから電話がありましてね」香代子さんも微笑みます。
「それで夕食に誘ったんです」
「そしたら話が合うんですよ。そのままカラオケで二人で熱唱したわね」
「それからバーに行って・・・、その翌日には“あぐりの丘”に誘いましたよ」
二人は声を発てて笑います。

当時、英敏さんは この店を営ってたんですね。
「いいえ、私は或る会社の役員をしてました」
「私も他社ですけど事務をしてました」
それでは店を始めたのは何故ですか。
「一年ほど付き合って結婚を決めたんですが、それを機に思い切って違う世界に飛び込んでみようと」と英敏さん。
「私の親戚がコーヒーを扱う仕事をしてましたから、二人で始めたんです」と香代子さん。
「結婚を決めてすぐでした。それから四年後に入籍したんです」英敏さんは当時を振り返ります。
でも、何だか順序が解りませんね。
「実は、二人とも離婚歴がありましてね」英敏さんはさらりと話します。
「主人には息子と娘が、私には二人の娘がいましてね。だから子供が成人するまで入籍はしなかったんです」香代子さんも明るく応えます。

 

 

tana_012でも、見合いをして互いに返事をすることもなく二か月も放置してたのは解せませんね。
「本当は既に私には見合いの予定がありましてね、その練習のつもりで彼女と会ってみたんです」
「私もそうなの。見合いってどんなものか経験したくて。お互いに本気ではなかったのに・・・ね」二人は見詰め合って笑います。
“嘘から出たまこと” と類義語に”瓢箪から駒が出る”と言うのもありますが、二人には“駒”ではなく“恋”が出たんですね。

 

 

 

2015年2月Vol.121「よろしく先輩114」