浦川太一郎・敦子ご夫妻

「誰も知らないところで」

浦川 太一郎・敦子ご夫妻 クラフトベーカリー・オロン

yoroshiku_24.fw「うちの奥さんをパンに例えると、食パンですね」太一郎さんが、敦子さんを見る目を細めました。
 「主人は、そうですね、フランスパンでしょうか」敦子さんも、太一郎さんを改めて観察するように小首をかしげて言います。結婚して九年目だそうですから、こうしてマジマジと見つめ合うのは照れ臭そうですね。

 

 

 

 

 

二人が知り合ったのは、太一郎さんがパン職人の修行をしていた福岡での事。敦子さんの友人と仲の良かった太一郎さんが、いつの間にか遊び仲間に加えられていたんだとか。同じ夢を持つ若者たちなのですが、そこから先の結婚に至る詳細は“忘れた”そうですから詮索はよしましょうか。

 さて、こうして“食パン”と“フランスパン”の交際が始まった訳ですが、ちょっと今、お店がお忙しいようですので、その間、ここで皆さんと一緒に考えてみましょう。
  “食パン”とはどんなパンなのでしょうね。食べるに決まっているんですから“食”を付ける必要はないのに、と思いませんか。  もう一つ、“フランスパン”はどんなパンですか。
 語源や説とされる物は様々にありますから、あくまでも一般的に言われていることですが、“食パン”は他にも“食べないパン”があるからだとされます。油分が少ないので、デッサンをする木炭を消すのに使いますからね。これはイギリスパン。
 では“フランスパン”はどうでしょうか。これも皆さんがイメージされる物だけでなく、フランスで作るパンの総称なのだとか。つまり、こちらのご夫婦はイギリスとフランスの関係なんです。世界史で習う『百年戦争』の対戦国同士みたいですね。今も両国は、あまり仲は良くないと聞きますが・・・。
 二人の仕事は、朝の三時半ころから夕刻六、七時ころまでだそうですから、かなり大変なんですね。
 「皆さんの喜ばれる顔が私達の幸せでもあります」
 「誰もが夢をみている間に、私たちは一緒に夢を作り焼き上げているんですよ」

 

 

yoroshiku_24_02.fwなるほど、百年戦争になぞらえたのは失礼でし
たね。そう言えば、ドーバー海峡には海底トン
ネルがあり、イギリスとフランスは国際列車ユ
ーロスターで繋がってますもの。この二人も、
人知れずしっかりと心を通わせているんでしょ
うね。

 

 

2007年5月vol.31 「よろしく先輩24」