第2話 「今も残り伝わる愛」

私の両親は二人とも既に他界しています。明治生まれの人で、母は明治。大正、昭和、平成と約一世紀を生き抜いた人でした。
終戦後父の故郷である長崎に、私を連れて満州より引揚げて来る。私を育てるために、若い時に習得した社交ダンスを教えることで生活の基盤を作っていたのです。
父と母との出会いは、母が社交ダンスを東京で教えていたときの事。父は長崎より上京し、母の教えるダンスを習いに行くのでした。母の話によると熱いラブコールの末、結婚に至ったのだそうです。当時、時代は昭和恐慌と言われ金融不安、就職難と若い二人の生活は現代では想像もつかないほど厳しいものだったと聞いております。
戦後の混乱した時代も母は身に付けていたダンスが生活を守ったと自慢げでした。昭和恐慌、戦後の混乱、と戦前戦後と波乱に満ちた時代を苦労を共にした二人は積極的に一歩一歩と地盤を固めていったのでした。
二人の出逢いはダンスを通して、生涯ダンスと共に価値観を同じくしたのですね。仕事を共にし、深く理解し合い、ある時は若い人たちの為の出会いの場を作り、カップルを作り、長崎に良い家庭人を作る為に貢献してきました。
昭和の厳しい時から、戦後の平和な時を駆け抜けてきたのも二人の価値観がダンスという舞台がもたらしたものではなかったか。今は亡き二人の絆の強さを思いだして心温めるのです。