栗林慧・洋子ご夫妻

「熱き思いに」

栗林 慧・洋子ご夫妻 昆虫写真家

yoroshiku_32.fwマグマの熱で、周囲の岩石の組織が変化すると変成岩になります。でも、熱が強すぎたり距離が近すぎると融けてマグマになってしまいます。
 ほどよい熱や距離が大切なのは、どこか夫婦関係 にも通じる気がしますね。

 

 

 

 

 

二人は、会社勤めをしていた頃の同僚で、結婚したのは、将来プロの昆虫写真家を目指していた慧さんが二十四歳、洋子さんが二十二歳の時。しかも、知り合って一年も経たないでゴールインしたのだそうです。洋子さんには不安はなかったのでしようか。
 「何もありませんでした。将来の事なんて誰にも判らないんですからね。若い時の結婚はいいですよ」
 「主人は真面目な人でした。だから迷わず結婚したんです。それは常々、親から言われてましたから」
 では、慧さんにはどんな女性に見えたんでしょう。
 「まあ・・・、良かったんでしょうね・・・」と、上の空。昆虫の話以外にはあまり関心がないのだそうですから、今日までの人生は洋子さんに振り返って頂きましょうか。 

  慧さんがプロとして独立したのが三十歳の時。それ以降、洋子さんも慧さんの仕事を通じて大勢の人達と出会うことになったのだそうです。
「結婚するまでの私は、何もせず漫然と暮らしていましたが、主人のヘルプをするようになって人生観が一転しましてね。昔の同級生からは、見違えるほど人が変わったと言われましたよ。そして強くなりましたね。奥さんが強くないと家庭は納まりません
から、この点も良かったですね。分野の違う人達との出会いも多くありましたし、二十二歳から一流の写真を見て来ましたので、人や物を見る目が出来ました・・・。何もかも主人のお陰です」

  二人はやがて結婚四十五年になるのだそうで、洋子さんの表現を借りると“コンビ四十五年”です。
 「夢は・・・、思えば叶いますよ・・・」

 

 

yoroshiku_32_02.fwそれまで、昆虫の世界に思いを巡らせているの
かと思っていた慧さんが、ふと、噛み締めるよ
うに話しました。「現実に・・・そうなりまし
たからね」
 そんな慧さんは、洋子さんと対照的に、若い
時のまま変わらないのだそうです。変化しない
人が、パートナーを大きく変化させて来た訳で
す。ほどよくマグマに接した石灰岩が、輝く“大
理石”に変成するのと同じように。

 

 

2008年1月vol.39 「よろしく先輩32」