第2話 「『喜びも悲しみも幾歳月』も共感」

私は生まれてから大学を卒業するまで北海道の田舎で過ごしました。先祖は農耕馬が農業や輸送の主要な手段であった頃、馬蹄職人として津軽海峡を渡りました。現在存命の90歳近い両親の頃には、北海道開拓の時代はすでに終えんを迎えて廃業し転々と移り住みました。最後に行き着いた土地が映画「喜びも悲しみも幾歳月」(1957年、木下恵介監督)の舞台になった札幌近郊の石狩灯台ちかくの住宅街です。

全国の灯台を転々と移動する灯台守の人生を描いたこの映画の末尾で、主人公夫婦はエジプトに向かう娘夫婦の船を見送りながら「子どもを育てて本当によかった」とつぶやきます。隠遁生活を送る両親は今でも一緒にこの映画のVTRを擦り切れるほどに繰り返し鑑賞しています。

パートナーとのつながりで最も大事なことは「共感」すること。私自身まだ過去の「喜びと悲しみ」を振り返る余裕はありませんが、老いた平凡な夫婦と一本の映画の関わりから、そんな風に思えてきます