第3話 「賭け」

「一世一代の勝負をするために
僕はそこで何をかければよかったのか
(中略)
さて 財布をさかさにふったって
賭けるものが何もないのである
僕は僕の破滅を賭けた
僕の破滅を
この世がしんとしずまりかえっているなかで
僕は初心な賭博者のように閉じていた目を見開いたのである」
(「賭け」『黒田三郎詩集』)

お金もなく、職についたばかりで結婚相手を決めたとき、まさにこんな気分であった。でもそんな瞬間があったことなど、普段は思い出すこともない。振り返れば、赤面しつつしばらく若き日のことを考えて感慨に耽ってしまいます。いまでは、相手を女性の「あなた」として見ることよりも、同志を中国語読みしてドンチィとお互いに呼び合う。

こんな風に性を超越して本当のパートナーであることが長続きの秘訣です、といいたいところですが、実は僕自身あのころと何も変わっていません。鈍感であることが大事なことかもしれないと思うのです。