市川森一・柴田 美保子ご夫妻

「線路は続くよ・・・」

市川 森一・柴田 美保子ご夫妻 脚本家・女優

yoroshiku_44.fwJRの線路は総延長19881.6キロ。私鉄と合わせると約28000キロに及ぶと言います。全線を時速100キロで走っても、およそ12日間かかることになりますから、大変な距離なんですね。

 

 

 

 

 

 

脚本家と女優さんですから、知り合ったのはやはり撮影現場なのですか。
「ええ。宝塚で撮った“マキちゃん日記”というテレビ・ドラマの仕事でした」美保子さんは、テレビの中と同じ白い笑顔で話します。
「ボクは近くの旅館に籠ってシナリオを書いてたんですが、撮影所に行った時に出会いましてね」森一さんも聞きなれた歯切れのいい口調です。
「主人は結構ひょうきん者なんですよ」
「彼女はね、女優さんだから美人なのは当たり前ですが、気立ての良い女性だなって印象でしたね」
森一さんは冷静な表情のまま続けます。
「彼女は大阪住まいでボクは東京なんですが、ある日、偶然に阪急の宝塚線で一緒になりましてね。梅田駅を降りて、すぐそばの大阪駅まで送ってくれたんです。しかも、新大阪までの切符も買ってくれて」
美保子さんの作戦だったんですか。
「いいえ、とんでもない。構内は広いし、切符を買う場所も判りにくいでしょうから・・・」
「ひと駅間だけですけど、気の利く女性だなと思いましたよ。新大阪で降りた時は、その切符を野球のウイニング・ボールみたいにずっと持っていたかったんですが、駅員さんに取り上げられましたからね」
目の前の出来事のように、悔しそうな森一さん。
わずかひと駅間の切符でも、愛する人から貰うと宇宙の果てまで行けるものなんですね。

それから三年後に結婚。人目がありますから、思うようにデート出来なかったのではありませんか。
「特に気になるようなことはなかったですね。ときどきお茶でも飲みに行く程度でしたから」
「東京からの電話代が、当時の家賃と同じ7万円くらい掛かってましたけどね」
どんな話題だったんですか。
「夫は、仕事の話ばかりしてましたよ」
「何とか彼女を逃さないように、いかにも仕事がたくさんあるように言ってましたね」

 

 

yoroshiku_44_02.fwそんな二人も、もう結婚35年を過ぎたそうで
す。
そして今でも、毎朝起きたら笑顔で“おはよ
う”の挨拶を欠かさないのだとか。人生の片道
切符で、レールのように並んで歩み続けてい
るんですね・・・。
そうだ、あの日の切符は、きっと神様が預
かっているに違いありませんよ、森一さん。

 

 

2009年1月vol.51 「よろしく先輩44」