第3話 鄧林おばあさんに

1981年「日中友好の船」訪日団が長崎に寄港。中国・鄧小平副首相(当時)の娘さんが乗船と、消息筋から入手。特ダネが来る。当日、訪問先のグラバー園で待機。鄧はダンと発音。300人の団員に「ダンさんは?」「不識(しらない)」の返事ばかり。と―。1人の中年女性が手を上げた。発見。シャツにスラックス、ローヒール式サンダル。日本製のカメラを手に。父親似で黒ブチ眼鏡の奥に優しい目。鄧林さん(37)。画家。

「長崎の山、海、港が箱庭的美。画材によく私の気持ちに合います」。夫(39)は技術者。一人息子さんに「おみやげは算数計算のできるオモチャ、坊やも近く学校ですから」。

文化大革命で鄧小平さん一家は強制労働など熾烈な迫害にめげず復活。中国近代化の基礎を築く。林さんは、過去の苦労、影を微塵も見せず内にひめた強さを、実感。それが花鳥山水画の“静の世界”かも。今は孫に囲まれ、いいおばあさんでしょうね。きっと。