第3話 我が家

わたしの家は神奈川県の向ヶ丘遊園にある。とうとう終の棲家になった。執筆に疲れると夕食の買い物に行く妻の御供をする。近くのスーパーまで徒歩で7,8分である。季節の旬の物があると嬉しくなる。初夏にはスイカ、涼しくなると梨が飾ってある。お菓子も季節それぞれに変わる。仏壇への御供え物もある。魚のコーナーで鯵が飾ってあり「松浦産」と書いてあればその夜の食卓は鯵のたたきと焼き鯵となる。幼い頃に食した物は生涯を支配するらしい。家内が作るちゃんぽんの味もおふくろそっくりになった。仕事柄、よく長崎や松浦に帰る。長崎では居酒屋でよく酒を飲む。つまみは東京にはないものばかりである。鯨や鱶(ふか)の刺身で酒を飲むと少年時代が蘇る。東京から連れて行ったチームの連中にも「美味いだろう」と強要するが、笑って首を傾げる。やはり、少年時代の味はそれぞれに違うものらしい。幸い、家内は長崎の味を知ってくれて、それやこれやと提供してくれるまでになった。帰りの長崎空港でも鯨やスボかまぼこ、竹輪、大村ずしを山と買い込み土産にする。家内とは東京で結婚したが、もう長崎で結婚したも同じである。墓も松浦にとも思うが、こればかりはどうなることか。