第2話 おふくろの味

家内の実家は古民家であったが荒れに荒れていた。それから10年程過ぎて、家内の実家は「今年の梅雨で壊れる」といわれるまでになっていた。それから古民家再生が始まった。あの屋根に10万、あの廊下を直すのに20万といった次第である。知覧の建築家や大工の棟梁が手弁当でやってくれた。いま流行りの古民家再生の奔りである。囲炉裏を造り自在カギを吊るした。自在カギはわたしが趣味で集めたもので、神奈川の自宅には10本ほどあった。囲炉裏の灰も知覧の友人が運んでくれた。いまでは、年に数回囲炉裏を囲んで酒宴である。知覧で酒といえば芋焼酎である。家内が作る長崎風の煮物や茶碗蒸し、枕崎の鰹、知覧の地鶏肉が並ぶ。皿はわたしが伊万里で創った大皿や母が残した食器である。わたしの実母は食器や茶器を集めるのが趣味の人だった。ここにきて母が集めたガラクタが役に立っているのである。家内の味付けも母の味付けとそっくりになった。雑煮からしてそうである。妻の実家で長崎のおふくろの味を味わう。もしかしたら、これは理想の形なのかもしれない。