光藤数也・明美ご夫妻

「人魚の歌声」

光藤 数也・明美ご夫妻 横浜市・長崎市在住

yoroshiku_90.fw“遠くて近きは男女の仲”といいます。清少納言の枕草子に出て来る言葉ですから、古今を問わず恋心とは普遍的な世界なんですね。この場合の遠近は物理的であるより心理的な距離なんですが、昨今は交通網の発達も手伝って、遠距離での交際も珍しくありません。恋する二人にはさぞや辛いことでしょう。

 

 

 

 

 

数也さんは横浜在住、明美さんは長崎。夫婦なのに何故なんですか。
「僕は船の仕事をしていますが、会社が川崎なので」数也さんは淡々と話します。
「私は女性対象のセミナーをしていますから・・・」明美さんも、さらりと話します。
知り合った経緯が知りたいですね。
「特別な出会いではありませんよ」
「私が知人の飲食店を手伝っている頃、彼がお客として時々来てくれたんです」

 同居したいとは思わないんですね。
「まあ、僕が定年したら考えますが・・・」
「休暇を利用して長崎に来るから、それでいいです」
「二、三ヶ月に1回くらいですかね」
「この間、昨年の日数を計算したら合計で九十六日でした。一年の約四分の一でしたよ」
 二人は新鮮な笑顔で見つめ合います。
 それじゃ、一緒にいる時は、ベッタリですね。
「いいえ。僕は一人でシーカヤックに乗りに行くことが多いですよ」
「あとは二人で温泉によく行きますけど」
これまた不思議ですね・・・。

 数也さんを見た第一印象は、“変わった人”だったと明美さん。
そして明美さんの印象は“実年齢より若い人”と思ったと数也さん。
そんな二人が、知り合った時のままの距離で生活をしているんですから、新鮮さは誰にも負けないのでしょうね。

 

 

yoroshiku_90_02.fw話を聞いていると、ギリシャ神話のセイレーン
を思い起こします。航海者を美しい歌声で惹き
つける人魚。二人に生活圏の距離があっても、
数也さんと繋がっていられるのは、他人には聞
き取れない明美さんの心の中の歌声があるから
かもしれませんね。

 

 

2012年11月vol.97 「よろしく先輩90」