八木一郎・道子ご夫妻

「さん、さん、sun」

八木 一郎・道子ご夫妻 長崎さるくガイド

yoroshiku_93.fw「人の行く裏に道あり花の山…」京都で過ごした学生時代、観光客の訪れることもない山里で満開の桜を見つけたときに、ふと思い出した千利休の言葉です。細い疏水の一面を覆うピンクの穏やかな流れは、文字通り”春の来た道”のようでした。

 

 

 

 

 

知り合ったきっかけは何だったんですか。
「道子さんも私も教員でした」
「一郎さんが二十二歳、私が二十歳の時でした」
「二部授業と言いましてね、一つの教室を使って、午前中が私で、午後からは道子さんのクラスが授業をしました」
「それがきっかけかしらね」
二人は、目を細めて微笑みます。
印象はどうだったんでしょうか。
「私が道子さんに、まあ、一目惚れでしたね」
「一郎さんは、ちょっと不良っぽかったわ」
どんなお付き合いだったんでしょう。
「しばらくは同じ小学校の勤務だったんですが、そのあと三年間一郎さんが五島に赴任することになりました」
「当時、遣り取りした手紙が二千通以上もあるんですよ」道子さんは若い娘さんのように笑います。
「大きな段ボール箱に一杯ありますよ」一郎さんも青年のように語ります。
単純計算しても、お互いにほぼ毎日手紙を書いたことになりますね。

共働きだと、家事、育児など大変だったのでは。
「若い頃は一郎さんの母もいましたから、助けて頂いてましたけど、あとは分担してきましたよ」
「料理も育児もね。こどもを寝せつけるのは僕は上手ですよ」
「私たちは、二人で一人前なんです」と道子さん。
「結婚ってのは忍耐力ですね。これ人生に通じますよ」一郎さんは、言葉を確かめるように頷きます。

共通の趣味はありますか。
「私も道子さんもビールやお酒が好きでしてね」
「よく喋り、よく笑い、よく飲みます」
「あとは旅行かな。定年後しばらくは、日本列島の主な半島、岬を北から南と巡りました」
「奥の細道の旅では、東京深川から、岐阜大垣までと芭蕉の足跡にこだわりました」

 

 

yoroshiku_93_02.fw二人の話を聞いていますと、互いに「さん付
け」でよんでいます。そんなところにも、人
知れぬ思いがあるのでしょうね。まるで穏や
かな春の光のように目を輝かせていますもの。
「…いずれを行くも、散らぬ間に行け」
先の、利休の言葉はそう続きます。
二人の春は、まだまだ続きが長くありそうですよ。

 

 

2013年2月vol.100 「よろしく先輩93」