山下 輝昭・智春ご夫妻

「味の音色、心に響け」

山下 輝昭・智春ご夫妻 和食店、ペンション経営(壱岐市石田町)

yoro139

壱岐島の玄関口の一つ、島の南東部に開ける石田町の印通寺港。唐津市の唐津東港からだと、九州郵船のフェリーで1時間40分の距離だ。この印通寺港から北の芦辺町方向へ車で5分ほど走ると、道路左手に輝昭さんと智春さんの店舗兼宿がある。

「ふうりん」という名前に、二人の思いが込められている。「味の音色がお客さまの心に響き渡るように」

■舌鼓を打つ新鮮な刺身

取材に訪れた時は店先に「準備中」の札が

掛けられていたが、気持ちよく開けてくれた。刺身定食(1200円)を注文する。ブリ、タイ、マグロ、それに何と、この日たまたまなのかもしれないが、アラまでついていた。これらの刺身は、いずれも新鮮で柔らか。そして、一切れ一切れが大きい。思わず舌鼓を打った。

輝昭さんは地元石田町、智春さんは大分県中津市の出身。その二人が出会ったのは、福岡市だった。輝昭さんは高校を出て同市内で料理の修業をした後、23歳の時に今の土地が空いたため、家族に勧められて帰郷。店をオープンさせた。しかし、その後も毎週のように福岡へ出かけ、専門学校生の傍らアルバイトをしていた智春さんと、共通の友人の紹介で知り合った。

輝昭さんは、智春さんに一目ぼれした。「好みのタイプだったんです。楽しい人、一緒にいて笑える人がいいなと思っていました」。智春さんも「優しそうな方だな」と好感を抱いた。2年近く交際を続け、13年前、輝昭さん29歳、智春さん30歳の時に結婚した。1男2女に恵まれ、明るく暮らす。

「彼女は炊事、掃除、洗濯と、何でもできる人でした。店のこともよく頑張ってくれています」と輝昭さんは全幅の信頼を寄せる。だが、智春さんは「確かに頑張りはしたと思いますが、いろんな人との出会いがあって楽しかったですよ」と笑い、気負いがない。

もちろん、順風満帆でずっと来たわけではない。店を開店してからしばらくは、着実に客足が伸びた。しかし、商売にはやはり波があり、公共工事の減少なども影響する。

 

■笑顔が集う島の拠点に

そんな中でも、二人は淡々と「味の風鈴」

を鳴らし続けた。これからも鳴らし続けるだろう。「みんなが来やすい店、笑顔が集う店に」(輝昭さん)、「子どもからお年寄りまで、気軽に来てくれる店に」(智春さん)山下 輝昭・智春ご夫妻

和食の店に隣接して、白い瀟洒なペンションが建つ(1泊2食7000円~)。原の辻遺跡(石田町、芦辺町)、筒城浜、錦浜(石田町)、一支国博物館(芦辺町)、イルカパーク、朝市(勝本町)、焼酎の蔵元など、壱岐島は自然と歴史に恵まれている。この壱岐で、島人たちが集まり、旅人たちも島巡りの拠点にする。輝昭さんと智春さんは、自分たちの店と宿から、人々の心に涼しげな風鈴の音がいつまでも響き続けることを願う。

2017年3月 Vol.144「よろしく先輩138」