第3話 「つれあい NO.3」

もう少し両親の話をします。
 80を過ぎた父に認知症の傾向が現れると、母は目に見えて強くなっていきました。
 ある日父が倒れ、病院に救急搬送されました。
 意識はなく、医師からは絶望的と告げられました。
 付き添っていた母が、家に帰って掃除をすると言い出したのは、父が入院して3日目のことでした。
 準備をしなきゃ、と。
 “準備”の最中に、父の遺言状が見つかりました。
 それは遺言状というよりも、恋文でした。
 書き出しは“チャコちゃん”。
 母の愛称です。
 貴女と過ごせて幸せでした、と揺れる文字で綴られていました。
 だから貴女は一日も早く笑顔に戻りなさい・・・。
 私たちには、葬儀の通知先、費用は兄弟で折半すること、そして“お母さんがいつも笑っていられるようにしなさい”との遺言でした。
 その2日後に、父は逝きました。