パートナー考

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様々な分野で活躍する人たちが考える、男女の距離感

第1話 裏通りの絆 その1

 バスの1番前の席に坐っていた。快適に走っていたが、乗ってきたふたり連れの遣り取りがどうも気に入らない。口篭り、ぼそぼそと小声で話す男に、「じゃがましい」と柄が悪い口調で女が文句をつけているのだ。背後から聞こえて来る声に、私は不愉快になり、腹立たしくもなった。静かなバスの中で女の悪口は続いていたが、次のバス停のアナウンスがあり、女が降車ボタンを押すように男に命じ、やれやれこれで降りていってくれるのかと安堵した。バスが止まり、ぶつぶつと女は男をなじり、男は口篭り応え、私の横を通りバスから降りるのを見た時、ふたりを見直した。女は小柄で痩せていて、目が不自由なのかサングラスを掛け、背丈が180cmはある巨体の男が女の手を引き、バス料金を払い、女を軽々と抱えてバスから降りていったのだ。私は、仲睦まじく歩いて行く彼らの後ろ姿を、苦笑い、見送った。

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