江川和政・貴子ご夫妻

「二つの愛」

江川 和政・貴子ご夫妻  (有)印章のえがわ

yoroshiku「印鑑は芸術なんですよ」開口一番、ご主人の江川和政さんは作業の手を休めずにポツリと語った。
「それが、最近はパソコンの普及で、誰でも簡単に作れるようになりましたからね。大切な技術が失われていくようで・・・」ご主人の言葉を受けて、奥様の貴子さんがそう話す。

 

 

 

 

お二人の結婚は昭和45年。広島で大手旅行 代理店に勤めていた貴子さんが転勤を命じられ、長崎に赴任して間もない頃だった。
「母が長崎出身でしたから一緒に来たんです。そして同僚の紹介で主人と知り合いました」市内の印鑑店に勤めるご主人と共働きを続けました。5年後、ご主人は独立開業。「娘が生まれましたが、母に面倒を見てもらい共働きを続けました。ところが…」貴子さんは遠くを見るように「昭和54年に母が亡くなり、子育てのために私は退職して主人の手伝いをするようになりました」。

 

今年で結婚35周年、これまでに何か波風のような出来事は?「特に何もなかったですね…」貴子さんがご主人に視線を向けると、「私は釣りバカでよく五島沖に船釣りをしに行くんですが…その波風くらいでしょうね」と大笑い。「そう。休日になると私はいつも釣り未亡人なんです」と、ひとしきり笑いを広げてから、貴子さんは真顔になって続ける。
「こんな調子の主人ですけれど母が亡くなる一週間ほど前から、母の印鑑を彫り始めましてね。もう、使うあてなんてないのに…」すると、ご主人は軽い咳払いを残して、そそくさと出かけていった。「主人は、その印鑑を母の棺に入れてくれたんです」貴子さんは神妙に、しかし淡々と語る。

 

では、貴子さんに、これから結婚される方々への一言を…。
「せめて一本だけでも手彫りのきちんとした印鑑を持っていただきたいですね。そして、婚姻届に、人生の大切な事にしっかり確認して使ってほしいものです」

 

 

2005年6月vol.8 「よろしく先輩1」