第3話 「披露宴のスピーチ」

 仕事柄、教え子の披露宴に招かれる機会は多い。頼まれる私にとって憂鬱の種がスピーチである。第一優秀な成績でもなかった者を在学中は優秀な成績でと褒めなければならないのは、根が正直者の私にとっては苦痛である。しかも参列者を飽きさせない気の利いたスピーチでなければならないし、謝礼をいただくのではなくご祝儀持参でしなければならない訳だから大変な苦痛である。
 最近は結婚に魅力を感じない若者が増えているともいわれる。あるときこんなスピーチをした。「皆さん!独身の 『独』という字を見てください。けものへんですよ。つくりは虫けらですよ。すごい文字でしょう。人間は一人では生きられません。社会の中で生きています。社会の最小単位は家族なのです」。独身男女からはブーイング。年配者からは「なるほどさすが大学の先生のいうことは違う」と感心された。