第1話 「夫婦風情 その一 「妻と嫁」」

 夫は日本人で私は中国人だ。物事に対する考え方、生活習慣などの違いによって、結婚した最初のころよく喧嘩した。大学の講師、日本語の通訳などの仕事に長年従事したので、日本語に対する自信が多少あった。しかし、現実はそうあまくなかった。
 中国大陸に生まれ育った私は物事をはっきり言うほうだが、夫はそうではなかった。そのうえ、東京、大阪などの大都会と違い、田舎では「男尊女卑」の思想は思う以上根深く残っている。殆どの場合、女性は相手の「妻」であるとともに、その相手の家族全員の「嫁」であるような気がする。そして、結婚した早々「妻」と「嫁」という言葉の内包する言葉の意味もわかったような気がする。しかも妻になる幸福感より「嫁」になった悲壮感はかなり強かった。家庭内では、「嫁」の立場は想像以上きびしかった。それも今では楽しい思い出になりつつある。