第26話 「パラソルの女」

見知らぬ女性と二人きりのバス停。バスを待つ間に、暗い空から耐えに耐えていた雨がポツリポツリ。やがて大粒。よろしかったらどうぞとパラソルが開く。おし気もなく高価そうなパラソルを差し掛けてくれる。俺も男、タクシーに手を挙げる。いえいえ近くですからと女性。雨足が舗道にはねる。どうぞどうぞと背を押す。「あいにくでしたね、どちらまで?」運転手に行き先を告げ、とても好もしいタイプの女性でしたので偶然のなりゆきに甘えて、仕事のこと、趣味のことなど我ながらかなり積極的にアプローチ。やがて彼女の指定した地点へ。「ありがとうございました。また会えると嬉しいですね、さようなら」 やがて翌年の夏になり、同期の友人が結婚するということで仲間うちで彼と婚約者を招いて前祝いをという段取りを私が取りしきりました。会場にいってビックリ。婚約者はなんとあのパラソルの女性ではありませんか。宴の途中、彼が近づいてきて、タクシーの中でしゃべりまくった男はキミだったのか。そして一言、並の男はしゃべりすぎてボロを出す。オレみたいなできる男は目と雰囲気でだまってこころに火をつける、だとさ。