第22話 「遠火の強火」

お料理のお好きな方はご存知だとは思いますが、お魚を直火で、多分炭火なんかで焼いていた頃の母から娘へ言い伝えられてきた生活の知恵だと思うんですが、趣き深い言葉ですね。おいしく、いい色に焼きあげる母の、そのまた母の工夫が伝えられて、大げさに言えば往時の生活文化のひとつとして、今は言葉だけが生き残って、いろんな場面で重宝に使われているようです(ホント?)。強火で、いつも近くであぶられていては人間関係だって火傷します。弱火で近火だとうっとうしい。なにモタモタしてんのよ、とイヤ味のひとつも言いたくなりますよね。近くて遠きは男女の仲とか、まさに言いえて妙です。実証例を二つ、三つ。居酒屋商売をしていますと、お客様同士のご縁もいろいろ。開店最初のカップルは出張でひとりでフラリと入って来られた男性客。数ヶ月してから礼状が、はるか信州から。当店でその時知り合った女性と文通、長距離恋愛の末、結ばれたという嬉しいお便り。未だに賀状のやり取りが続いています。最近は対馬の男と築町の魚屋の娘。これまた想いはるかな日々を乗り越えて、昨年末結婚。“遠火の強火”は今も脈々と生きています。チャレンジのヒントになるのでは。