第17話 「ご尊敬申し上げています。」

行く道に墨あざやかに、書きあげ文字の長暖簾。いつもの道のその文字は時の流れに華やいで、ほのかに甘く、カステラ縁起を物語る・・・云々。また、手から手へ、こころからこころへ、手づくりの歴史を重ねて馥郁(ふくいく)と・・・云々。一度や二度とはいわず、この5秒から120秒までの数パターンの、いかにもらしい、老舗のラジオCMは何度となくお耳に達しているハズです。ね、ね、ね。老舗に寄りそって、安定感のある、時代の変化にゆらぐことのない落ちついた作品を、というのが、ま、コンセプトといえば格好良すぎかな。もちろんナレーション原稿はすべて私ですぞ。同社のCM、プロモーションのほとんどを手がけていたのが現役の頃の私ですぞ。今は亡きご先代社長のご信頼の厚さに感謝しながら、公私のご交誼の中で学ばせていただいたシーンのひとつひとつが、今も人と人とのおつきあいを考えるうえでの貴重な財産となっています。20数年に及ぶ同社長と青二才の私をゆるがずつなぎ続けてくれたものは口はばったいいかたですが、お互いへの尊敬です。来し方の環境も、学びの道もちがう人間関係を究極で支えてくれるもの、瀬戸際での救いは尊敬しあっているかどうかです。尊敬のない親しい仲は、いっときの馴れ合い、じゃれあいです。信頼はパーツで成り立っていきますが、尊敬は総合力です。学びへの刺激です。愛していますよりご尊敬申しあげていますの方がはるかにこころに響くのは、歴史上の真実です。尊敬は損得抜きで計算もなし。