パートナー考

partner

様々な分野で活躍する人たちが考える、男女の距離感

第3話 「ゴンチチのCD」

「壊してもいいから中のCDだけは取り出して欲しいの」古いラジカセはゴンチチのCDを飲み込んだまま動かなくなっていた。外せるネジは全て抜き取ってはみたものの部品と本体がガッチリ組み込まれていて分解することができなかった。あきらめて近所の電気店に持ちこんだ。数日後、取り出してもらったCDを久しぶりにステレオで聴いた。懐かしい。新婚のころ一緒に過ごしたあの日の情景が浮かんでくる。音楽ってアルバムのようだ。マンションから今の家に引っ越して、片付かないダンボール箱が積まれた部屋の真ん中で妻が作ってくれたゆで卵を食べたっけ。こうして振り返ってみると、ふたりにしか見えない懐かしい思い出がいくつも増えている。思い通りにはならなかったり、失敗することの方が多かった。それでもがんばって今日までやってこれたのは、いつも隣に彼女がいてくれたから。恋人、戦友、女房? 微妙に違う。今は、もうひとりの自分のような気がする。

  • 投稿者:管理人
  • 更新

様々な分野で活躍する人たちが考える、男女の距離感

第2話 「見つめる」

結婚当初、妻は美人でスタイルがよくて、それこそ食べてしまいたいくらい可愛かった。2年前に銀婚式を迎えた妻の肌はいつの間にかハリを失いシミやシワが目立ちはじめ指先は家事で荒れていた。これまで散々苦労をかけてきた証拠だ。妻にとって最大のストレスは私が48歳のときに長年勤めていた会社が倒産したことだ。50歳を目前にして収入源を失った不安は恐怖に近い。再就職は予想を超えて厳しかった。ハローワークで何ができるのかと聞かれ「営業です」と答えた。「募集は30代までですね」とあっさり断られた。起業すると覚悟を決め「やる」と宣言した。妻は文句も言わず「はい」と言ってくれた。最初は苦しかった。思うようにいかなくて落ち込んだり、収入が不安定になった時もあった。それでも前を見てコツコツと積み上げてきた。今は新婚時代の頃のようにお互いを見つめ合うことはないが、気が付けばいつもふたりで同じ未来を見るようになっていた。

  • 投稿者:管理人
  • 更新

様々な分野で活躍する人たちが考える、男女の距離感

第1話 「秘密基地」

妻のスケジュール帳にビッシリと小さな文字が並ぶようになったのは高齢の母親の介護に追われる生活になってからだ。
家に人が来ない日は週に一日だけ。
ヘルパーさんが週二回。
ケアマネジャー、看護師さん、そして医師の往診日が日替わりでやってくる。
その合間に掃除、洗濯、買い物、食事の支度をこなす。
私も時間に余裕のあるときは手伝うが全てはカバーしきれない。
一日の予定がこま切れにされ自分の時間が奪われていく。
このままでは妻のストレスはたまる一方だ。
そこで近所の居酒屋を秘密基地にして時々避難することにした。
私はひたすら話を聞き続けるだけだが妻にとってはストレス解消になるらしい。
そう言えば創作料理が食卓に並ぶようになった。
料理好きの妻が居酒屋の肴を参考に自己流にアレンジしたものだ。
これが美味い。
ささやかだけど秘密基地で過ごす時間を楽しむようになった。
妻はスケジュール帳に記入した居酒屋の名前を嬉しそうに見ている。

  • 投稿者:管理人
  • 更新

PAGE TOP