長崎ゆかりの素敵なご夫婦をご紹介
塚原祥禎・ツヤ子ご夫妻
「いつもの事だけど」
塚原 祥禎・ツヤ子ご夫妻 塚原造船所 代表
南太平洋フレンチ・ポリネシアには、ヘイヴァ・イ・タヒチと言う祭があり、その中でカヌー競技が催されていますが、この風景を見ていますと、ふとペーロンを思い起こします。
物の本によりますと、ペーロンは中国の詩人の屈原が世情を嘆き悲しんで入水を図った時、それを助けようと早舟を仕立てて捜したのが始まりだとか。今日では中国南部から東南アジアまで分布するそうですから、かなりの騒動になったものですね。
舟は杉、櫂は樫を用いるそうですが。
「丈夫な舟と、水中でやや曲がって撥ねる櫂が必要ですから、これからの気を使うんです」
さすがに職人さんですね。挨拶を終え、仕事の話になると祥禎さの目付きが凛々しくなりましたよ。
ところで、現在は奥さんが入院中で一時帰宅しているだそうですが、お互いにどのような存在なのですか。
「さあ、それは一口では表現できませんね」
では、ご主人とツヤ子さんを舟と櫂に例えると、どちらがどちらなんでしょう。
「それも難しいですね。夫婦は一心同体ですから。ただ、舟の打ち合わせに多くの人が来て料理や酒を出しても、本人は声を掛けてない限り部屋には入りません。台所の板場に坐ってますよ」
これは相当な亭主関白なのかなと思いますと、ツヤ子さんが自らそうしているのだそうです。
そんな昔気質のツヤ子さんが不在だと、困ることも多いでしょうね。
「娘が二人いますから、日常生活で困ることはありません」祥禎さんは、優しい目で話します。「ただ、七時頃に仕事を終えて家に戻っても、娘達はまだ帰っていませんから、“お帰りなさい”とか“お疲れ様”がないんです。誰もいない所にひとりっきり・・・。普段は当たり前であることが、ふとした機会に消えてしまうと、改めて有り難みが判るんですよ。それが夫婦なんでしょうね」
そして、ポツリとツヤ子さんが付け加えまし
た。
「今があることを、お互いに感謝していま
すよ」
結婚四十年を迎えたベテラン夫婦ならでは
の境地かもしれませんが、それも日々の“思い
やり”があってこそなんですね。
私共もそう努めようと思いますけど、その
前に互いの“思い込み”をなくすのが大変そう
ですがね。
2007年9月vol.35 「よろしく先輩28」